開発担当が答えるLPWA 920MHz帯(サブギガ帯)規格の選び方LPWA Developer Guide

弊社ではオリジナルの無線モジュールやIoT製品を開発・販売していることから、お客様から自社向けの無線機器を開発したいとご相談いただくことがあります。

例えば、既存設備の無線化やリプレース、要件定義からスタートする完全オリジナル製品の開発などご要望は様々です。

これまで自社の無線モジュールでの開発はもちろんですが、お客様からのご指定でLoRaやSigfoxなどの他社規格での開発にも携わってきました。

このページでは弊社開発担当が無線製品を開発するにあたり、各規格を選ぶポイントと評価をお伝えしたいと思います。

point1 通信距離
920MHz帯(サブギガ帯)通信を選択するということは、センサとゲートウェイがkm単位で離れている環境が想定されます。
ただし、規格によっては1~100kmと大きく異なります。また、設置環境により最大通信距離に達しないこともあります。
point2 通信データ量・速度
要件ごとに必要な通信仕様(データ量、通信速度)は異なりますが、規格によっては送信回数やデータレートに制限があり、要求仕様を満たせない可能性があります。
point3 消費電力
無線方式を選定するうえで、消費電力は最も重要な評価項目のひとつです。
送信時の消費電流や送信時間が電池寿命に大きく影響します。
point4 ネットワークの柔軟性
中継器の使用やメッシュネットワークの構成を想定した場合、対応できない規格があります。
point5 開発・運用コスト
開発・運用するにあたって、許容されるコストを考慮しなければなりません。
特にアライアンス加入義務や認証、ゲートウェイの設置・運用、公衆ネットワーク利用費用を検討する必要があります。
これらはプライベート型と公衆ネットワーク型の運用方式に分けられます。

[プライベート型]
ゲートウェイの設置・運用は自社で行う必要がある。
ただし、デバイスからゲートウェイまでの通信料金がかからないため、エンドデバイスの台数が増えても運用コストは低い。
また、アライアンスへの加入義務や最終製品認証が不要で、導入コストも低く抑えることが可能。

[公衆ネットワーク型]
既存のネットワークを使用できるため、ゲートウェイの開発コストは不要。
ただし、アライアンスへの加入義務や最終製品認証が必要な場合があり、運用にも稼働台数に応じたコストが必要。

LPWA規格の特徴と評価LPWA Standards

  • インタープラン(IM920sL)

      • ・運用方式:プライベート型
      • ○通信速度:2.5kbps~100kbps
      • ◎最大通信距離(見通し):約35km
      • ◎消費電流(送信時電流の目安):16~27mA
      • ◎マルチホップ:最大7段の中継に対応
      • ○運用コスト:不要
      • ◎アライアンス加入/最終製品認証:不要
      • 特徴:
        • 見通し35kmの長距離通信&マルチホップに対応
        • ゲートウェイやクラウドサーバを介さず、端末同士で直接通信も可能
        • 1:1や1:Nなど用途に応じた柔軟な運用が可能
        • プライベート運用のため、ゲートウェイの設置・運用管理は自社で行う必要あり
      • 主な用途と販売実績:
        • ロボット用遠隔操作リモコン:約13,000台
        • 作業員への通知・呼出:約12,000台
        • 介護・病院向け見守り:約10,000台
        • 農業IoT・害獣対策:約4,000台
      • 評価:
        • 独自プロトコルにより通信方式やデータ形式を最適化し、低消費電力かつ長距離通信を実現しています。
          マルチホップ通信に対応しているため、工場や倉庫など電波環境が厳しい場所でも安定した通信が可能です。
          また、高速道路工事現場などの公共案件でもご採用いただいており、高い信頼性と安定性が求められる現場で多くの実績があります。
  • Private LoRa(ローラ)

      • ・運用方式:プライベート型
      • ○通信速度:300bps~50kbps
      • ○最大通信距離(見通し):数㎞~十数㎞
      • ○消費電流(送信時電流の目安):30~150mA
      • △マルチホップ:一部製品は対応
      • ○運用コスト:不要
      • ◎アライアンス加入/最終製品認証:不要
      • 特徴:
        • LoRa変調を使用
        • 会社毎に独自の通信プロトコルを使用
        • 小規模でも導入容易
        • 他社LoRa製品とは通信不可
        • プライベート運用のため、ゲートウェイの設置・運用管理は自社で行う必要あり
      • 主な用途:
        • プラント設備監視
        • 見守り端末
        • 小規模IoT
      • 評価:
        • ゲートウェイを自由に設置・運用できるため、通信コストを抑えつつ、運用要件に応じた柔軟なネットワーク設計が可能です。
          工場や倉庫、敷地内設備など、限定エリアで低コスト運用したい場合に適しています。
  • LoRaWAN(ローラワン)

      • ・運用方式:公衆ネットワークorプライベート型
      • ○通信速度:250bps~50kbps
      • ○最大通信距離(見通し):10㎞
      • ○消費電流(送信時電流の目安):30~150mA
      • ×マルチホップ:非対応
      • △運用コスト:公衆網利用時は端末単位で通信契約必要
        (年額3,000~5,000円/台程度)
      • △アライアンス加入/最終製品認証:どちらも必須
      • 特徴:
        • LoRaWAN準拠製品なら異なるメーカー同士でも通信可能
        • EUなどではインフラ整備済みで、海外展開しやすい
        • 標準規格のため、他社製品への置き換えが容易
        • 専用のネットワークサーバーが必要
        • ランニングコストが高い
      • 主な用途:
        • スマート農業
        • 河川・ダムの水位監視
        • 防災・災害検知
      • 評価:
        • 設備の状態監視やスマート農業など、設置場所が点在するセンサデータ収集用途で主に採用されています。
          国際標準規格として認められており、海外展開を見据えたIoTシステムでは有力な選択肢となります。
          使用国ごとの周波数帯の違いに対応することで、システム構成を大きく変えずに展開可能です。
  • Wi-SUN(ワイサン)

      • ・運用方式:プライベート型
      • ○通信速度:約100kbps
      • △最大通信距離(見通し):1㎞
      • ○消費電流(送信時電流の目安):20~50mA
      • ◎マルチホップ:対応
      • ○運用コスト:不要
      • △アライアンス加入/最終製品認証:どちらも必須
      • 特徴:
        • メッシュNWに対応
        • インフラ用途向けで高セキュリティ
        • IPv6通信に対応
        • 他の規格と比べて伝送距離が短い
        • 認証取得や仕様準拠が必要で開発の敷居が高い
      • 主な用途:
        • 国内の電気・ガス・水道
        • メーターで数千万台の実績あり
      • 評価:
        • 電気・ガス・水道などのインフラ分野で、最優先で検討される規格です。
          国内スマートメーター用途では、Wi-SUNが無線標準規格として認められています。
  • Sigfox(シグフォックス)

      • ・運用方式:公衆ネットワーク型
      • △通信速度:100bps/600bps(上り/下り)
      • ◎最大通信距離(見通し):50㎞
      • ○消費電流(送信時電流の目安):~40mA
      • ×マルチホップ:非対応
      • △運用コスト:端末単位で通信契約必要(年額1,500円/台程度)
      • ○アライアンス加入/最終製品認証:最終製品の認証取得が必須
      • 特徴:
        • 日本ではKCCSがサービス提供
        • 国内人口カバー率約95%(2023年2月時点)
        • 送れるデータ量が少ない(12byte/パケット)
        • 送信回数に制限がある(上り140回/日、下り4回/日)
      • 主な用途:
        • 工場設備の状態監視
        • 盗難防止システム
        • 家畜モニタリング
      • 評価:
        • 極めて少ないデータ量で、超低消費電力を最優先したい場合に適した規格です。
          盗難防止や見守り用途など、1日数回のデータ送信で十分な用途に有効です。
          一方で、双方向通信や柔軟な制御が必要な用途には不向きです。
  • ELTRES(エルトレス)

      • ・運用方式:公衆ネットワーク型
      • ×通信速度:約80bps(上り)
      • ◎最大通信距離(見通し):100㎞
      • △消費電流(送信時電流の目安):~80mA
      • ×マルチホップ:非対応
      • △運用コスト:端末単位で通信契約必要(年額2,000円/台程度)
      • △アライアンス加入/最終製品認証:どちらも必須
         ※自社利用のみの場合も申請が必要
      • 特徴:
        • ソニーが開発した公衆NW型通信規格
        • 高速移動体通信に対応
        • 国内人口カバー率約90%(2020年11月時点)
        • GNSS標準搭載
        • サービスエリア外では利用不可
        • 端末から基地局への上り通信のみ
        • 送れるデータ量が少ない(16byte/パケット)
      • 主な用途:
        • 物流・輸送の位置管理
        • 移動車両の監視
      • 評価:
        • 高速移動体を含む広域通信を想定したシステムに適した規格です。
          通信速度は低いが、小さなデータを長距離送れるという特徴を活かし、物流トラッキングや災害対策などの用途で採用が進んでいる
  • Wi-Fi HaLow(IEEE 802.11ah)

      • ・運用方式:プライベート型
      • ◎通信速度:150kbps~20Mbps
      • △最大通信距離(見通し):1~1.5㎞
      • ×消費電流(送信時電流の目安):~500mA
      • ×マルチホップ:非対応
      • ○運用コスト:不要
      • ○アライアンス加入/最終製品認証:必須ではないが、認証なしではブランド名・ロゴを使った販売不可
      • 特徴:
        • 920MHz帯を使用するWi-Fiの新規格
        • 他の規格に比べて通信距離は劣るが高速
        • 低解像度の画像や動画の伝送が可能
        • 高速通信時は距離が短く数十m程度
        • 常時接続用途では消費電力大
      • 主な用途:
        • カメラ映像の伝送
        • ドローン制御
      • 評価:
        • 通信速度が速いことから、カメラ映像の伝送やドローン制御など、ある程度のデータ量が必要な用途に向いた規格です。
          一方で、LPWAの中では消費電力が高いため、長時間の電池駆動を想定したシステムには不向きです。

※当社調べによる(2025年12月時点)

弊社では無線モジュール開発の技術資産を活かした、内部ソフトウェアの有料カスタマイズや、ご要望に最適なフルスクラッチの製品開発を行っています。
また、LoRaやSigfoxなどの自社以外の規格を採用した機器の開発経験もありますので、ご興味のある方はお問い合わせフォームより申し込みください。